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2016年5月3日火曜日

D&O保険の適用範囲、特約、免責条項に注意が必要

D&O保険第三弾として、保険を付保する場合の留意事項について、フェデラル・インシュアランスの山越誠司氏のお話に基づいて、お話します。

1、被保険者と子会社の範囲
被保険者は、取締役と監査役が普通ですが、執行役員や管理職の従業員、子会社の取締役、監査役、管理職従業員などを対象にすることができます。対象範囲が広い方が、安心感はあるのですが、本来カバーしなければならない親会社の役員ではなく、それ以外の人たちが支払限度額を使い切ってしまっては本末転倒になります。

米国での訴訟の場合、米国の弁護士費用が多額なのでこれによって支払限度を使ってしまうということもありえます。このため、被保険者を増やしてあげようという親心は禁物です。

2、補償の広さに惑わされない
① 会社訴訟の補償
会社が役員を訴える訴訟を補償の範囲に含めることができます。別稿で述べたとおり、その場合も、保険料を会社負担することができます。しかし、問題を起こした役員を会社が訴えるというケースの場合、その損害賠償の負担は役員個人がすべきという考え方もあっておかしくありません。米国のD&O保険では、会社訴訟は対象外になっているそうです。

② 会社の費用の補償
第三者や株主から役員が訴えられた場合に、会社がそれに対応して役員を支援することがあります。それには次のような3類型があります。
・会社補助参加費用
・会社初期対応費用
・第三者委員会設置費用
これらをD&O保険でカバーすることができますが、これらが支払限度額の内枠の場合には、上記①と同様に支払限度額を使ってしまうことになります。

3、事実免責と確定判決免責
日本のD&O保険約款では、事実免責(in fact exclusion)と言って、原告が訴えた時点か、何かしら事実を証明する証拠が出された時点で、保険会社が保険支払を免責されることになっています。

免責条項で一般的なのは、役員が故意に会社に損害を与えたとか、役員が私的利益を得るために会社に損害を与えたというものです。例えば、原告の損害賠償事由に私的利益が含まれている場合には、免責条項により保険金が支払われないということになってしまいます。

日本の保険約款では、この事実免責の条件が曖昧で不安定と言われているそうです。米国では、判決確定免責(final adjudication exclusion)になっていることから、判決が出ない限り免責とならず、保険金が出るということになります。役員から見たら、このほうが有利ですね。

ただ、米国の場合、判決で私的利益や故意が認定されてしまうと、保険金が出なくなることから、判決が出る前に和解に持ち込むケースが多いそうです。

日本の保険会社のD&O保険では事実免責、米国の保険会社の場合は確定判決免責ですので、上記の点を考慮して、どちらにするか検討が必要となります。

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